ご案内
近年、預金金利自由化の進展による利鞘の縮小に加えて、大企業の証券市場における資金調達が活発化したことなどから、銀行の個人・中小企業向け貸出の比重が高まっており、この分野での信用リスク管理の重要性が増しています。
信用リスクに対しては、貸出先の事業内容、信用度、担保等について十分な審査を行なうことが重要です。
また、貸出を実行した後も、貸出先の経営状況等を定期的に把握することが欠かせません。
特定の貸出先や業種などに貸出が集中することを避けることにより、リスク分散を図ることも大切です。
カントリーリスクへの対応策としては、国別に支払い能力等を評価し、あらかじめ貸出限度額を設定しておくことが一般的に行なわれています。
A市場リスク 市場動向の変化によって、銀行の資産や負債の価値に変動が生じるリスクです。
市場リスクには金利リスク、価格変動リスク、為替リスクの三つがあります。
金利リスクは、運用と調達の金利改定時期が一致していない場合に、それぞれの金利変動によって利鞘が縮小したり、逆鞘になったりするリスクです。
価格変動リスクは、有価証券等の価格変動に伴って資産価値が減少するリスクです。
為替リスクは、外貨建ての資産・負債について、為替レートの変動によって為替差損が発生するリスクです。
金利リスクについては、運用と調達の金利改定時期の対応関係を適切に運営・管理していくことが必要です。
例えば、長期の貸出であっても、金利が六ヵ月ごとに見直されることになっている場合には、六ヵ月ごとの金利改定時期に合わせて金利の変更が可能な資金調達を行なうことが基本です。
このため銀行は、後述のALMの推進に力を入れています。
また、既に述べたようにスプレッド貸出の推進や新しい短期プライムレートの採用など、銀行の調達コストをより反映しやすい貸出金利の導入が進められているほか、金利スワ″プなどの新金融技術を活用したリスク・へこンも活発に行なわれています。
有価証券の価格変動リスクに対しては、運用方針を明確にしたうえで、運用残高を発行者別や発行者の所在国別、有価証券の種類や通貨別等に分別して、運用枠管理を適切に行なうことが基本と銀行経営の課題と展望なります。
この枠管理の考え方は為替りスクヘの対応についても当てはまります。
銀行は通常、為替ディーリングを行なっている支店別、ディ士フー別、通貨別等に為替の持高枠を設定し、実際の持高の把握と枠の見直しを定期的に行なっています。
価格変動リスク、為替リスクともに、市場動向の正確な見通しに基づいて対応することが重要であることはもちろんですが、見通しが外れて損失が出る場合にも損失が一定額以上に拡大しないようなルールを確立しておくことも重要とされています。
B流動性リスク 預金等の資金が急激に銀行から流出するなど、銀行の資金繰りが破綻をきたすリスクです。
個々の銀行にとっては自行0 信用低下による預金流出のほか、金融市場における突発的な状況変化によって、そのような事態に陥る危険性があります。
わが国の銀行は、国際業務については古くから短期調達・長期運用を行なっており、流動性リスクの観点からみた問題点として指摘されてきました。
近年、国内業務でも預金金利の自由化の進展とともに短期の預金が増加する傾向がみられる一方、運用面では長期貸出の比率が上昇しており、調達・運用のミスマ″チが拡犬しています。
流動性リスクへの対策としては、資産と負債の期間構成のバランスをとることが必要であり、それには後述するALMの手法が有効です。
なお、長期分離の見直しが、金利リスク、流動性リスクの圧縮に役立つことが期待されます。
Cその他のリスク 銀行はこの他にもさまざまなリスクに取り巻かれています。
事務面での事故や行員による不正行為は銀行の信用を著しく傷つけ、コンピューター事故の発生は、銀行はもちろん、国民生活や企業等の営業活動に大きな影響を及ぼします(経営管理リスク)。
銀行それぞれが、事故の発生を未然に防ぐための管理体制を整備するとともに、事故発生時に迅速、的確に対応できる体制を確立することが課題です。
また、内外の決済システムを通じた資金の移動が増大するなかで、決済システムの担い手である銀行が支払い不能に陥ると他の銀行に波及し、決済システム全体が混乱する危険性があります(システムーリスク)。
このような危険が現実のものとなることを避けるためには、システム内における銀行間の債権・債務の増大を抑える仕組みを構築することが必要であるとされています。
ALMの推進 ALM(アセットーライアビリティーマネジメント)は、主に金利リスクと流動性リスクに対応する観点から、銀行の資金運用と調達を総合的に運営、管理する手法です。
ALMの考え方は、も銀行経営の課題と展望ともと米国で生まれ、普及しましたが、わが国でも多くの銀行に活用されつつあります。
ALMの目的は、資産と負債の両面からリスクを適切に管理し、その範囲内で最大限の収益が得られるような行動計画を、立案・実施することにあります。
そのためには、運用・調達の期間や金利改定時期の対応関係を正確に把握し、金利・為替相場の予測を適切に行なう必要があります。
ALMの運営については、経営トップが参画するALM委員会といった組織が設けられる例が一般的です。
またその下部組織として、実務担当者で構成される金利予測委員会等が設置されています。
倒自己資本の充実 銀行はさまざまな手法を駆使してリスクの管理に努めていますが、不幸にしてリスクが現実のものになった場合に損失を穴埋めするための財源として、自己資本の充実が欠かせません。
すでに触れたBIS自己資本比率規制の導入は、近年の金融環境の変化に伴う信用リスクの増大に備えるものです。
BIS自己資本比率規制を安定的にクリアーしていくためには、自己資本の充実を図りつつ資産の増加を常にコントロールする必要があります。
自己資本の充実策としては内部留保の着実な増加 197を可能にする収益力の向上がもっとも重要です。
増資等の資本調達は市場環境に大きく左右されるうえ、そもそも増資等が投資家に受け入れられるためには、将来にわたって安定した業績を期待できる銀行であることが前提となるからです。
BIS規制導入に対応して、わが国の銀行はまず、自己資本比率算出の際の分子となる自己資本額の充実を図るため、増資等の資本調達を活発に行ないました。
その後、証券市場の低迷等からこうした資本調達に大きく頼ることはできなくなっており、分母に当たる資産の増加をコントロールする必要性が一層増しています。
資産の増加が制約されるなかで収益の増強を図るためには、単位資産あたりの収益効率を高める必要があり、近年、ROA(総資産利益率)を重視した経営が行なわれています。
欧米では、資産の入れ替えによって収益効率を高めるために、銀行の貸出資産の売買が活発に行なわれています。
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